春に動物病院が混む3つの理由とは?混雑回避のコツを獣医師が解説
春は動物病院が一番忙しい季節。GW前後をピークに、毎年3月下旬〜6月上旬は院内がとても混雑します。私の夫も獣医師ですが、夫が勤務する動物病院もこの時期は診察までの待ち時間が2時間になることも珍しくありません。
動物病院が春に混むのには理由があります。理由を知ることで、混雑をうまく避ける方法も見えてきます。
混雑を分散できると飼い主さんとペットの負担が減るだけでなく、スタッフもとても助かりますし、本当に具合が悪くて緊急の対応が必要なペットが早く診てもらいやすくなります。ぜひ今年の春から、できることを試してみてください。
春の動物病院が混む3つの理由

春に動物病院が混む背景には、主に以下の3つの理由があります。
- 新しいペットを迎えたご家庭が一斉に来院する
- 予防医療を始める時期が春に集中する
- 季節の変わり目で体調を崩すペットが増える
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.新しいペットを迎えたご家庭が一斉に来院する
春は、進学・就職・引越しなどのライフイベントが多い時期です。新生活のスタートに合わせて犬や猫を迎えようと考える方も少なくありません。
ペットショップやブリーダーからペットを迎えた538人を対象にした調査(Wizleap調べ、2023年)では、最もペットを飼い始めた人が多い月は5月と7月で、それぞれ12.1%という結果でした。
また、GWや年末年始などの長期休暇中にお迎えした人が全体の約24%を占めており、休みが多い時期に新しい家族を迎える人が多いことがわかります。
初年度(0歳のうち)のワクチン接種や健康診断のタイミングで動物病院を訪れるのも、ちょうど春頃になります。子犬・子猫の初年度のワクチンは複数回の接種が必要なため、一頭につき数回の来院が必要です。
2.予防医療を始める時期が春に集中する
ワクチン・フィラリア症・ノミやマダニ対策などの予防医療は基本的に春からスタートすることが多いため、この時期に来院する飼い主さんが増えます。詳しくは次章で解説します。
3.季節の変わり目で体調を崩すペットが増える
春は体調不良での受診が増える季節でもあります。寒暖差が激しいこの時期に体調を崩しやすいのは人も動物も同じです。
特に高齢のペットや持病のある子は気温の変化の影響を受けやすく、「急に食欲がなくなった」「元気がない」「下痢や吐き気が見られる」という訴えで来院するケースが増えます。
予防医療が春に集中する4つの理由

春に予防医療が集中する背景には、ワクチン・フィラリア症予防・ノミやマダニ対策それぞれの接種・投薬時期が重なっていることがあります。一つひとつ見ていきましょう。
1.混合ワクチンの接種
混合ワクチンは、犬や猫がかかりやすく、罹患したら重症になりやすい病気を予防するためのものです。年1回の接種が推奨されており、前年に打ったタイミングで大体1年後に予約を入れます。
多くのご家庭が春にワクチンを打った記録を持っているため、毎年春に接種が集中しやすくなっています。
2.狂犬病ワクチンの接種
狂犬病ワクチンは狂犬病予防法によって生後91日以上の全ての犬への接種が義務付けられています。接種は自治体が指定する集合注射か、動物病院での個別接種かで行います。
ですが、コロナ禍以降は集合注射を取りやめる自治体も増えており、動物病院で受ける方が多くなっています。
現在、狂犬病ワクチンは毎年4月1日〜6月30日の間に接種することが法律で定められています。
しかし、厚生労働省は狂犬病予防法施行規則を改正し、2027年(令和9年)4月1日から通年接種を可能とする方針を示しています。通年で接種できるようになれば、春に集中していた狂犬病ワクチンを接種するための受診が年間を通じて分散されることが期待されます。
ただし、4〜6月は引き続き「予防接種の強化期間」として周知される予定のため、春の混雑がすぐになくなるわけではありません。しかし、飼い主さんの都合に合った時期に接種できるようになることで、混雑の緩和につながることが期待されています。
3.フィラリア症(犬糸状虫症)の予防
フィラリア症は蚊の吸血により他のペットへと移っていく病気です。多くのフィラリア症の予防薬は蚊の発生時期に合わせ、5月〜11月頃に月1回投与する必要があります。
投与前には現在の感染の有無を確認する血液検査が必要です。そのため、「血液検査+フィラリア薬の処方」を目的に来院する飼い主さんがこの時期に一気に増えます。
4.ノミ・マダニ対策
ノミやマダニは吸血による健康被害だけでなく、感染症の病原体を運ぶこともある怖い寄生虫です。暖かい時期になるとノミ・マダニの活動が活発になるため、予防薬をもらいに来る飼い主さんも増えます。
春の動物病院の混雑を避けるための4つのコツ

春に混雑する理由を知って、準備しておくだけでスムーズに受診できます。飼い主さんができる4つのポイントを紹介します。
1.定期的な予防は3月より前に
ワクチンの接種時期は前回からぴったり1年後でなくても問題ありません。例えば、今年の春に接種した場合、来年は2月や3月に早めることで混雑を避けられます。また、予定より時期を遅らせる場合でも、1ヶ月程度であれば許容範囲とされています。
フィラリア症やノミ・マダニの予防薬も、本格的なシーズンに入る少し前に受診して薬をもらっておきましょう。
2.初診の場合は春になる前に1度来院しておく
春は初診の患者さんが増えます。初診の患者さんは検査する項目が多いので、1件あたりの診察時間が長くなりがちです。
春の混雑する時期に初診で受診するよりは、繁忙期の前に1度健康診断などで受診してカルテを作っておくというのも診察時間を短くする方法です。
3.かかりつけ医は自宅の近所に
かかりつけの病院はできれば近所にあると便利です。
夫の動物病院でも、家が近い飼い主さんは受付を済ませて一度自宅に戻るなど工夫をされていますが、遠方から来る方はなかなかそうもいきません。混雑を避けるために、わざわざ平日に休みを取って来院する方もいます。
緊急時になるべく早く受診するためにも、かかりつけ医はあまり遠くない方が望ましいです。
4.迷ったらまず電話で相談する
「これって受診が必要?」と迷ったときは、電話で症状を伝えて相談してみてください。すぐに受診すべきか、様子を見てよいかをある程度その場でアドバイスしてもらえます。
混んでいても、受診を先延ばしにしないでほしい症状
以下のような症状は待たずに、できるだけ早めに受診して下さい。
- 元気がない、ぐったりしている
- 食欲がない状態が1日以上続く
- 嘔吐・下痢が繰り返される
- 呼吸が荒く苦しそうにしている
- ふらつく、ぐるぐる回るなど神経症状がある
「混んでいるのに電話するのは申し訳ない」と思う必要はありません。混雑の緩和にもつながるため、動物病院側もとても助かります。
まとめ:春の動物病院の混雑を賢く回避しよう

春の動物病院が混む理由は、「新しく迎えたペットの来院」「予防医療の集中」「季節の変わり目による体調不良の増加」という3つが重なることにあります。
飼い主さんとペットも大変ですが、動物病院のスタッフもこの時期は毎日が戦場のような忙しさです。混雑を避ける工夫をしていただけると、飼い主さんとペットの負担が減るだけでなく、スタッフもより良い医療を提供しやすくなります。
狂犬病ワクチンの通年接種は、飼い主さんにはぜひ知っておいていただきたい情報です。2027年春から適用になる予定なので、ニュースや自治体からのお知らせハガキをチェックして混雑緩和に協力してもらえると助かります。
「定期的な予防は早めの受診を」「症状があるときは混雑を気にせずまず電話を」。この2つを意識するだけで、春の動物病院とうまく付き合いやすくなります。大切なペットの健康を守るために、春の動物病院の事情を知っておいてもらえたら幸いです。
関連リンク
- 犬・猫のワクチンはなぜ毎年必要?知っておきたい接種の理由
- https://cheriee.jp/articles/53793
- 【獣医師監修】愛犬の命をフィラリアの脅威から守ろう!
- https://cheriee.jp/articles/20376/
- 【寄生虫】犬糸状虫が引き起こす恐怖(フィラリア症)とその予防法
- https://cheriee.jp/articles/21063/
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