【獣医師監修】鼻ぺちゃは要注意!短頭種気道症候群とはどんな病気?
皆さんは短頭種気道症候群という言葉を聞いたことがありますか?
短頭種とは、パグやフレンチ・ブルドッグといった、いわゆる「鼻ぺちゃ」の犬種のことを指します。こういった犬種で見られることのある疾患が短頭種気道症候群ですが、一体どのような疾患なのでしょうか。
今回は犬の短頭種気道症候群について解説します。
短頭種気道症候群とは

短頭種気道症候群は、短頭種に見られる咽喉頭の解剖学的な構造異常により、気道が閉塞する疾患です。ここで言う解剖学的異常とは、外鼻孔の狭窄、扁桃腺の腫大、軟口蓋の過長、喉頭の反転小嚢、声門の狭窄、喉頭や気管の虚脱などのことです。
これらの異常により上部気道が狭くなると、体温上昇に対してパンティングで効率よく放熱ができなくなります。むしろ、呼吸数増加によって気道閉塞部の粘膜浮腫を増悪させ、さらに体温が上昇し病的なパンティングに進行します。
- 外鼻孔狭窄:鼻の穴が狭くなっていることで呼吸がしにくくなっています。
- 軟口蓋過長:喉の奥にある軟口蓋が厚く長くなることで、気管の入り口が狭くなります。
- 喉頭小嚢反転:喉頭の裏にある袋が吸気によって位置が変わり、気道が狭くなります。
外鼻孔狭窄は短頭種の17〜77%、軟口蓋過長は62〜100%、喉頭小嚢反転は58.9%、喉頭虚脱は53%で認められたという報告があります。
短頭種気道症候群の好発犬種
- パグ
- フレンチ・ブルドッグ
- ボストン・テリア
- シーズー
- ペキニーズ
- 狆
短頭種気道症候群の症状
- 異常呼吸音:「スースー」「キューキュー」「ズーズー」「ガーガー」「ヒーヒー」など、気道のどこかに異常があることで通常とは異なる呼吸音が聞こえる。
- いびき
- 睡眠時無呼吸
- 頻呼吸:長時間のパンティングは陰圧性肺水腫を続発し重篤化する。
- 呼吸困難
- チアノーゼ
短頭種気道症候群の診断

短頭種気道症候群の診断には、問診、身体検査、画像検査が用いられます。
検査の中には全身麻酔を用いるものもあるため、実施の前には必要性などを十分に理解していただいた上で検査に進みます。
問診/一般身体検査
短頭犬種において、呼吸音の異常などの上気道閉塞症状の有無を確認します。
また、視診にて外鼻孔狭窄の有無を確認します。
単純X線検査
頭頚部X線検査にて軟口蓋の過長や肥厚を確認します。
また、胸部X線検査にて気管の形成不全が認められることがあります。
鼻鏡/喉頭鏡検査
鼻鏡や喉頭鏡を用いて、鼻腔の解剖学的異常や喉頭小嚢反転、喉頭虚脱の有無を確認します。短頭種気道症候群の確定診断のためには、これらの検査が必要となります。
しかし、検査の実施には鎮静が必要となることが多いため、問診や画像検査で短頭種気道症候群が疑われた場合には、治療から入ることもあります。
短頭種気道症候群の治療

短頭種気道症候群の治療は、基本的には外科手術となります。しかし、年齢や症状の進行度によっては外科手術の適応外となることもあります。
外科治療
外鼻孔狭窄整復術や軟口蓋切除術は1歳未満で行うと安全性と有効性が高いと報告されています。また、年齢を重ねていても、原因となっている構造異常を改善することで呼吸状態の改善や、二次的な問題(肺水腫や熱中症など)の進行防止、再発予防に繋がります。
術式としては、外鼻孔拡大術、軟口蓋切除術、喉頭小嚢切除術などが用いられます。外科手術では全身麻酔が必要となりますが、呼吸器系に異常がある子では麻酔のリスクが上昇します。
避妊/去勢などと同時に手術を行うことで、麻酔をかける回数を1回で済ますことができます。繁殖など今後のライフプランを踏まえて、治療方針を獣医師と相談しましょう。
内科治療
投薬による内科的な治療は、症状の緩和は可能ですが根本的な治療にはなりません。呼吸困難などの緊急時にはステロイドの投与や、酸素吸入が必要となります。
日常的には気管支拡張薬などが用いられますが、効果は一時的で、長期の管理には向いていません。
短頭種気道症候群の予後

早期診断によって適切な処置が行われた場合は予後良好となることが多いです。しかし、重症の場合や治療が遅れた場合は、呼吸器合併症の発現や心臓への負荷増大が引き起こされることがあります。
子犬の時期からの定期的な健康診断や、体重管理が重要です。
短頭種気道症候群の予防

先天的な呼吸器系の構造異常が原因で発症する以上、完全に発症を予防することは困難です。しかし、生活環境を見直すことで、例えば熱中症のリスクを低減させることは可能です。
短頭犬種との生活では、以下のことに気を付けてみてください。
- 体重管理:首周りの脂肪の蓄積はスムーズな呼吸を妨げます。適切な体重を維持し、余計な脂肪がつかないようにしましょう。
- 温度管理:短頭種は呼吸による熱の放散が苦手です。エアコンなどを使用して涼しい環境を整えてあげましょう。
- 避妊/去勢時の手術選択:既に何らかの解剖学的異常が生じている場合には、全身麻酔のタイミングで同時に手術を行うことが推奨されます。
まとめ

短頭種気道症候群は呼吸に関係する疾患であり、時に命に関わります。愛犬が短頭種に該当する場合は特に、呼吸状態には常に気を配るようにしましょう。
そして何かいつもと違う様子があれば、すぐにかかりつけの動物病院を受診しましょう。
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