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コラム

スズメと日本人は付き合いが長い!暮らしに密着してきた歴史を解説

伊藤 悦子
伊藤 悦子 家畜人工授精師 、ペット栄養管理士

スズメは私たちにとって大変身近な小鳥ですが、どのような鳥か詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

興味深いことに、スズメは人が暮らす里や町に住むことが多く、山奥などではほとんど見かけません。その一方で、人里にいても近づけば一斉に逃げてしまいます。つまりスズメは、人とはつかず離れず、適度な距離を取りながら暮らしている鳥なのです。

そんなスズメも、貴族に飼われていた時代がありました。一方で、害鳥として嫌われて追い払われていた時期もあったのです。この記事では、スズメの基本情報や日本人との付き合いの歴史を解説します。

日本人に身近なスズメの基本情報

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スズメは身近な小鳥なのに、生態や食性は意外と知られていません。ここではスズメの基本情報をお伝えします。

スズメの基本情報

スズメは「留鳥(りゅうちょう)」といって、基本的に渡りをしない鳥です。主に人里の近くに群れで住んでいます。

公園や庭先で見かけたり、電線に止まったりしているのをよく見かけますね。地面をちょんちょんと跳ねながら移動するのが特徴です。

体長はおよそ14.5センチ、羽を広げた際の幅は約22.5センチです。色は全体的に茶色っぽく、頭は帽子をかぶったような濃い茶色をしています。胸やお腹は白っぽい色です。くちばしや目の周りは黒く、頬にはこげ茶の斑がある点が特徴です。

オスとメスの区別は、外見からも行動からもほぼつきません。どちらも巣作りをし、ヒナへの給餌も行います。ただ、お腹の毛が薄くなっているスズメがいたら、メスかもしれません。卵をずっと抱いていると羽毛が薄くなるのです。

スズメは虫も植物も食べる

食性は雑食です。イネ科の種子などのほか、バッタやアブラムシ、ガ、イモムシなどを食べています。小さなくちばしなのに、ガやイモムシなどを食べるのは意外ですね。

筆者は実際、ガを追いかけて飛びまわるスズメを見かけました。特に繁殖シーズンや子育て中は、栄養豊富な虫を食べて、しっかり栄養補給しています。

桜の蜜を吸うのも好きなようです。花ごとくわえて蜜を吸うので、散る前に花が落ちてしまうケースもあります。

スズメの繁殖は春ごろ

スズメの繁殖は春ごろで、巣立ちは抱卵から2週間ほどです。群れから離れてペアになったスズメは巣作りをします。巣は屋根のすき間や電柱の変圧器など、人家の近くに作られることが多いようです。

メスは交尾後、卵を1回につき4〜5個、何日間かに分けて産みます。そして、すべての卵を産み終わってから、ようやく温め始めるのです。一度に温め始めることで、ほぼ同じ日にふ化します。

これはヒナたちを守るためです。バラバラにふ化すると、大きくなっているヒナが卵を踏み潰すといったトラブルが考えられます。しかし、一斉にふ化すれば卵がつぶれるリスクもなく、親鳥も楽です。

2週間ほどでふ化したヒナは、巣の中で両親からエサをもらって成長していきます。巣立ち後も親鳥はしばらくヒナについて、エサを与えています。まだ飛ぶのもおぼつかないようなスズメのヒナが、親鳥にエサをねだっているのを見たことがある方もいるでしょう。

その後、ヒナは独立して自分でエサを取るようになっていきます。

スズメは飼育できない

スズメを飼いたいと思う人もいるかもしれません。しかし、スズメは保護鳥類であり、環境省の「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に基づき、基本的に飼育はできないのです。

学術研究や保護などの目的以外では飼えませんし、飼育する場合も環境省や自治体からの認可が必要になります。

そのため、植え込みなどでひとりぼっちでいるスズメのヒナを見つけても、保護しないようにしましょう。飼育が禁止されているのはもちろん、多くの場合は自立のための練習中だからです。近くで親スズメが見守っていることもあります。

親からのエサを待っている場合、人がいると親が近づけなくなるため、そのまま育児放棄につながる恐れもあります。

もし、ヒナが寂しそうに見えても、基本は見守るだけにして、連れて帰らないようにしてください。

スズメは害鳥でも益鳥でもある

かわいらしいスズメですが、実は害鳥でもあります。農家の人にとって、稲を好んで食べるスズメは困りものです。特に種まき直後や収穫直前の稲穂を食べたがります。イチゴなどの果物も好むようです。

一方で、畑や田んぼの害虫、雑草の実などを食べてくれる「益鳥」でもあります。人々を困らせたり、喜ばせたりと小さいながら存在感は大きいのですね。

スズメと日本人の関わりの歴史

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日本人にとって特に身近なスズメの歴史を見てみましょう。古くから人々の近くにいたらしく、なんとすでに古事記には「スズメ」が登場します。

古事記にはすでにスズメの記述がある

『古事記』は日本で最古の歴史書として知られており、奈良時代の712年に成立しました。古事記にはスズメについての記述があり、おそらくこの時代にスズメがいたと考えられます。スズメが登場するのは「天若日子(あまめのわかひこ)」という人物の葬式のシーンです。

三上修著の『スズメ つかず・はなれず・二千年』によると、葬儀には、いろいろな鳥が役割を持って登場していると説明されています。

たとえばガンは死んだ人にささげる食事を頭に乗せて運ぶ役、カワセミは食事作りの役、キジは泣き女(なきめ)の役などです。そしてスズメは「米をつく役」として登場しています。

作中で三上氏は、「鳥は、この世とあの世を行ったり来たりできる神聖な生き物と当時は信じられていたため、人が鳥の格好で葬儀を執り行ったのでは」と述べています。スズメは「米をつく役」なので、お米が好きなスズメらしい役割です。

平安時代には飼育が流行ったことも

平安時代には、貴族たちの間で「スズメのヒナ」の飼育が流行りました。『枕草子』には、スズメのヒナを飼うことは心がときめくと清少納言が綴っています。

『源氏物語』では、「捕まえたスズメのヒナを犬が逃がしてしまった」と書かれています。これは「日本人は鳥が好き?平安時代から江戸時代まで飼育の歴史をたどる」の記事でも紹介しました。

https://cheriee.jp/articles/53657/

当然「鳥獣保護法」もありませんから、ヒナを捕獲して飼育していたと考えられます。ヒナを連れて行かれた親鳥は、さぞ困ったでしょう。スズメのかわいらしさは、いつの時代も人の心をつかんでいたとわかります。

ちなみに、なんとも不思議なことに『万葉集』にはスズメが一切出てきません。他の鳥、たとえばウグイスなどは登場します。ウグイスの場合は、限られた季節にだけ「ホーホケキョ」と鳴く声と、なかなか姿が見えないことに特別な感じを覚えたのでしょう。

一方で、スズメはいつも人家近くで「チュンチュン」と鳴いているので、あまりにも身近すぎたのかもしれません。

おとぎ話でもスズメは活躍

おとぎ話の「したきりすずめ」も有名な物語ですよね。内容を覚えている方もいると思いますが、簡単に説明します。

障子の貼り替えに使う糊をなめたスズメに怒ったおばあさん。おじいさんが大切にかわいがっていたスズメなのに、舌を切って山に追いやってしまいます。おじいさんはスズメを哀れに思い、スズメの宿を山奥に探しに行きます。

スズメは再会を喜び、お礼におじいさんをもてなします。そして「大きなつづら」「小さなつづら」をお土産に渡しますが、謙虚なおじいさんは小さい方を持ち帰りました。家に帰ってつづらの中を開けると、なんと小判がたくさん入っていたのです。

それを見た強欲なおばあさんは、スズメの宿を訪ねて、大きなつづらをホクホク顔で持って帰ります。途中でつづらをこっそり開けてみると、中にはたくさんの蛇やトカゲが入っているのです。びっくり仰天したおばあさんは心を入れ替えました。

この物語は「動物を助ける善行を積むと、恩返しがある」という仏教の教えを伝える話だとも考えられています。人々に身近なスズメは題材にしやすいのかもしれませんね。

「したきりすずめ」は、宇治拾遺物語(鎌倉時代)の「腰折雀」が原作と考えられ、「腰を折られるスズメ」「舌を切られるスズメ」など、さまざまなパターンが存在します。

江戸時代には俳句に登場

万葉集には出てこなかったスズメは、江戸時代になると、俳句の題材として多く登場するようになります。

春の季語「雀の子」

スズメの俳句といえば、小林一茶の「雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る」が有名ですね。ヒナたちが道端で群れたり、エサを待っていたりしたのでしょう。生き物への温かいまなざしが感じられます。

季節は春で、季語は「雀の子」です。つまり昔から、スズメは春ごろに巣立ちを迎えていたことがわかります。

秋の季語「稲雀」「雀蛤となる」

秋の季語に「稲雀(いなすずめ)」があり、こちらは稲田を荒らす害鳥であるスズメを指しています。群れをなして、稲田を荒らすスズメは厄介者でもあったのですね。

同じく秋の季語「雀蛤(すずめはまぐり)となる」は、中国の言い伝えから来るものです。二十四節気のひとつである秋分ののちの15日目、「寒露(かんろ)」のころに「スズメが海に入って蛤になる」という不思議な季語です。

冬の季語「寒雀」

冬には「寒雀」という季語もあります。これは、寒さの中、体をふくらませて寄せ合っている様子を表したものです。たしかに冬のスズメたちはふっくらとふくらんでいてかわいいですね。ふくらんだスズメは文字通り「福良雀(ふくらすずめ)」とされ、家紋などにもなっています。

また、「ふくらすずめ」という帯の結び方もあります。結婚式など、華やかな装いをするシーンにぴったりの伝統的な結び方です。

浮世絵の素材で描かれるスズメ人間

スズメは、浮世絵の素材にもなっていました。歌川国芳の浮世絵『里すずめねぐらの仮宿』は、頭がスズメの人間が描かれています。

花魁になったスズメは、スズメなのに妙に色気があるのが興味深いところ。これは、花魁を描くのを幕府から禁止されたため、国芳は花魁をスズメにして描いたのです。

よくよく見ると、優雅で余裕すら感じる花魁スズメのほかに、花魁を眺める男スズメ、笑顔のスズメ……同じような顔のはずなのに、個性的で見ているだけでも楽しくなります。

「おやどはどこだ」などと書かれた服を着た男スズメもいます。これは、ご紹介した「したきりすずめ」にちなんだもので、国芳のユーモアを感じますね。

日本でスズメは減っている?

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ずっと昔から日本人にとって身近なスズメですが、実は近年数が減っているといわれています。実際、2016年から2021年に環境省が行った調査では、減少が明らかになりました。

特に、農地などの開けた場所での総個体数が減っていることがわかっています。2015年以降に減少が顕著だという特徴があります。

減少の原因は気温上昇のほかにも、人の手が入る畑や田んぼが減ったことなどが挙げられます。つまり、草だけが生い茂るような荒れ地では、スズメは暮らしにくいのですね。最近は高気密住宅が増えており、軒先などに巣を作りにくくなっている点も減少の原因と考えられています。

スズメが暮らせない日本にはしたくないものです。今、私たちができることは何か、考えていく必要があるでしょう。

スズメと日本人の関わりまとめ

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この記事では、日本人とスズメの歴史を解説しました。スズメは渡らずに群れで暮らす小さな鳥です。

人々の近くで生活する特徴があるため、身近な存在の野鳥といえます。あるときは農作物を食べる害鳥であり、あるときは害虫を食べる益鳥でもあるのがスズメなのです。

スズメと人の付き合いは長く、『古事記』にすでにスズメが出てきます。平安時代には貴族の間で飼育が流行り、江戸時代には俳句や浮世絵の題材になりました。万葉集には登場しないのは不思議ですが、あまりにも身近だったからなのかもしれません。

近年は気温上昇や人の手が入らない農地の減少、住宅の変化などでスズメが減っています。長いお付き合いのスズメが日本からいなくならないように、人間ができることはないか考えたいですね。

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