ペットの手作りごはんは必要?獣医師が伝えたい、食事と愛情の考え方
「手作りごはんのほうが体にいいんですよね?」
「手作りのほうが愛情が伝わりますよね?」
「毎食同じペットフードでは、かわいそうではないですか?」
犬や猫を迎えたばかりの飼い主さんは、こうした疑問を抱くことがあるかもしれません。大切に育てたい気持ちから、食事にもこだわりたくなるものです。
ですが、手作りのほうが必ずしも優れているわけではありません。ペットにとって本当に大切な食事とは何か、少し整理してみましょう。
ペットフードにマイナスイメージを持つ理由

昔は、ドッグフードはホームセンターで大袋に入って安く売られていて、袋を開けると独特の油っぽい匂いがするものが主流でした。私の実家でも、30年前に飼っていた犬にはそのようなフードと煮干しを与えていました。
猫のごはんも、白米に鰹節や味噌汁をかけたいわゆる「ねこまんま」を与えていたご家庭も多いかもしれません。
今ではペットの健康管理や栄養学の研究が進み、ペットフードの安全性や栄養設計は大きく向上しました。それにもかかわらず、ペットフードによくないイメージを感じてしまう方がいらっしゃるのは、以下のような理由ではないでしょうか。
加工品に対する不安
まず「加工品=体によくないのでは」というイメージです。人の食事でも「できるだけ手作りが安心」「加工食品は避けたい」と考える方は多く、その感覚をそのままペットの食事にも当てはめてしまいやすいです。
原材料がわかりにくい
ペットフードは見た目から材料がわかりにくいため、何が入っているのか心配になる飼い主さんもいらっしゃるでしょう。
実は、パッケージの表示の仕方にも法律による決まりがあります。原材料名と添加物名は、ルールに基づき全て記載する義務があるので、原材料が気になるときは確認してみてください。
毎回同じごはんを与えることへの抵抗感
飼い主さんの心理的な抵抗感も、とても大きいのではないでしょうか。人は毎日同じ食事が続くとさすがに飽きてしまいます。そのため、ペットにも「食事の時間も楽しんでほしい」「もっと変化をつけてあげたほうが喜ぶのでは」と感じるのも飼い主さんの優しさでしょう。
ペットフードの基本を知っておこう

では、こうした不安や迷いを踏まえたうえで、本当にそこまで心配する必要があるのかを知るためにも、まずはペットフードの役割を解説します。
ペットフードというとひとまとめに考えてしまいがちですが、フードにもいくつかの種類があります。まず知っておきたいのが、「総合栄養食」という考え方です。
総合栄養食とは?
総合栄養食とは、成長段階ごとにそのフードと水だけで犬や猫に必要な栄養を一通り満たせるように作られた主食のことです。たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなど、健康を維持するために必要な栄養素がちょうどよく摂れるように設計されています。
そのため、健康な犬や猫であれば、基本的には総合栄養食と水だけで毎日の食事として十分です。
総合栄養食には、明確な基準がある
総合栄養食と表示するには、犬や猫に必要な栄養基準を満たしていることを、メーカーが分析試験や給与試験で確認する必要があります。
全てのペットフードが総合栄養食というわけではなく、間食用や、病気や特定の症状があるペットが食べる療法食もあります。
健康な子は総合栄養食だけで問題ない
総合栄養食は、栄養学的には安定していて安心できる食事と言えます。
実際、総合栄養食のペットフードを毎日食べて健康に過ごしているペットはたくさんいます。ペットフードは手抜きではなく、栄養面がしっかり考えられた食事を安定して与えられることは、とても大切なことです。
「手作りのほうが体に良い」は本当?

ペットの手作りごはんの本やSNS投稿を見ると、とてもおしゃれでおいしそうなメニューが並んでいます。彩りのきれいな野菜やお肉がきれいに盛り付けられ「こんなごはんなら食欲も湧くし、体によさそう」と感じる方も多いと思います。
でも、その食事は、本当にその子の体に合っているのでしょうか。
動物は毎食違う食べ物を消化するのは苦手
実は、犬や猫の消化管は、人のように毎食違う食事を取ることを前提にしたつくりではありません。個体差はありますが、食べ慣れないものや脂肪分の多いものを与えたり、急に食材を変えたりすると、下痢や嘔吐、食欲不振を起こす子も少なくありません。
「おいしそう」と感じるかどうかは、色よりも匂いで判断
犬や猫は人とは色の見え方が違います。「おいしそう」「食べたい」と感じるのは、色よりも匂いの影響が大きく、味や食感、記憶も加わって判断していると考えられています。
飼い主さんは手作りや見た目で愛情を伝えようと一生懸命なのに、結果としてその子の体に負担になってしまうのは、とてももったいないことです。
手作りごはんだけが愛情ではない

手作りごはんの本は、まるで人の食卓に乗っていても問題ないようなメニューのものもあります。しかし、正直に言うと私は「これを毎日続けるのは手間もかかるし、食費もかさむし、大変そうだな」と感じてしまいます。
栄養バランスを考えて食材を買い、加熱して、小分けして保存。時間も手間もかかることでしょう。ペットに与えてはいけない食材などの勉強も必要です。
しかも、犬や猫が毎回きちんと食べてくれるとは限りません。せっかく頑張って作ったのに食べなかったり、お腹を壊したりすると、飼い主さんのほうがが疲れてしまうのではないでしょうか。
手作りがしたいならトッピングを足すという方法も
それでも「何か自分でもしてあげたい」「少し手をかけたい」と思う方もいるでしょう。そんなときは、全部を手作りにするのではなく、いつものフードに少しトッピングを加えるくらいから始めるのがおすすめです。
例えば、ゆでたささみや野菜を少量ペットフードにのせるといった方法です。これなら栄養の土台は総合栄養食で保ちつつ、「手をかけてあげたい」という気持ちも形にできます。
食欲が落ちてきたシニア期のペットには、トッピングされた食材の目新しさで食いつきがよくなるかもしれません。
ただし、与えてよい食材かどうか、量が多すぎないかは確認が必要です。玉ねぎやレーズンのように犬や猫に与えてはいけない食材もあります。急に新しいものを入れるとお腹を壊すこともあり得るので、最初は少量から、様子を見ながら取り入れましょう。
https://cheriee.jp/articles/559/
無理なく続けられることがいちばん大切
食事は毎日のことです。だからこそ、「理想的に見えること」よりも、「その子に合っていて、自分も無理なく作り続けられること」が大切です。
手作りごはんに向いている飼い主さんもいます。知識を学び、時間をかけ、必要に応じて栄養設計も考えながら続けられるなら、それは一つの選択肢です。でも、そうでないなら、無理に頑張らなくても大丈夫です。
犬や猫にとって一番うれしいのは、飼い主さんが笑顔で、無理なく一緒にいてくれることではないでしょうか。ごはん作りに疲れてイライラしてしまうより、栄養面でも安心なフードを与えて、その分たくさん遊んだり、散歩に行ったり、ゆっくり撫でてあげたりするほうが、ずっと幸せなのではないかと考えます。
手作りかどうかより大切なこと

ペットの手作りごはんは、一見すると愛情深く理想的に見えます。ですが、手作りだから必ずしも体にいいとは限らず、食べ慣れないものによって下痢や食欲低下を起こす犬や猫もいます。そもそも、犬や猫は毎食違う食材を消化するのは苦手です。
総合栄養食は必要な栄養が考えられているため、毎日の食事として十分信頼できる選択肢です。
大切なのは、手作りかどうかではなく、その子の体に合っていて、飼い主さんが無理なく続けられること。愛情はごはんの手間だけで決まるものではありません。一緒に遊ぶ、散歩する、体調を気にかけるといった日々の関わりでも、飼い主さんの愛情は十分に伝わるはずです。
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