コロナ禍で起きた世界の「ペットブーム」と犬や猫の「飼育放棄」
新型コロナウイルスの世界的な流行は、ペットをめぐる状況にも大きな影響を与えました。コロナ禍では、人々の不安や孤独感を埋めるように、世界中で多くのペットたちが新しい飼い主のもとへ迎えられています。
しかし、非常に残念なことに、コロナの収束とともにペットの飼育放棄も相次ぎました。今回は、コロナ禍前後の世界のペット事情を振り返っていきます。
※本記事は2023年時点の情報をもとに作成し、各国の法律の施行状況などを一部更新しています。
癒やしを求めてペット需要が急増した「イギリス」

イギリスではパンデミックのさなか、ペットの需要が急激に高まりました。
イギリスのペット産業協会「UK Pet Food」の統計によると、コロナ禍を経てペットの飼育数は大きく増加し、2022年には推計飼育頭数が犬で1300万頭、猫で1200万頭にのぼりました。
特に2021年は国内だけでは供給が追いつかず、海外から多くの子犬や子猫が輸入されました。ペットやその関連製品の販売額も過去最高を記録し、ペット産業は大いに潤いました。
しかし、2022年に入ると、電気、ガス、食料品など生活に欠かせない物品の物価が高騰し、インフレ率は40年ぶりの高水準となる11%を超えます。すると、ペットの飼育費用を負担しきれない家庭が増え、保護団体への引き渡しや飼育放棄も増加しました。
英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)によると、2022年7月までに、飼育放棄されたペットは、前年の同じ時期に比べ25%増加したそうです。
一方で、新たに引き取られたペットの数は前年比で10%減少しており、飼育を手放す人が増える一方、迎え入れる人は減るという厳しい状況がうかがえます。
飼育数の増加に伴い動物福祉の向上が見られる「アメリカ」

米国動物虐待防止協会(ASPCA)の調査によると、アメリカでは、コロナ禍で5世帯のうち1世帯が犬や猫などのペットを飼い始めました。
その多くは2021年の調査時点でも飼い主のもとで暮らしていましたが、リモートワークから出社勤務への変更や、物価の高騰による飼育費用の問題などを抱えている人も少なくありません。
そんな中、2022年にニューヨーク州で「パピーミルパイプライン法(Puppy Mill Pipeline Bill)」が成立しました。
この法律は「ペットショップによる犬、猫、うさぎの販売を禁止する。里親探しを目的とする特定の団体が、ペットショップと協力することは許可される。」というものです。
この法律により、ペットショップでの犬・猫・うさぎの販売が禁止され、保護団体による譲渡活動がいっそう促されることになりました。
パピーミルとは「子犬工場」を意味し、無責任で動物福祉に反する繁殖を行う悪質なブリーダーのことを指します。このような繁殖業者を規制する動きは、アメリカの他の州でも見られ、カリフォルニア州、イリノイ州、メリーランド州などではすでに同様の法律が制定されています。
なお、ニューヨーク州のパピーミルパイプライン法は、2024年12月15日に施行されました。施行に先立ち、犬の販売が売上の大半を占めていた一部のペットショップでは、保護動物の譲渡モデルへ移行せずに閉店を選ぶ店舗も出ています。
ロックダウンとバカンスの弊害が大きい「フランス」

フランスでは、約50%の家庭で何らかのペットを飼っています。そんなペット大国のフランスですが、コロナの影響で猫の不妊手術が例年どおりに行えなかったことで猫が増え、2021年の子猫の保護施設への引き渡しは2019年に比べて30%増加しました。
犬の場合はさらに深刻で、ロックダウン中に「犬の散歩」が外出理由として認められていたこともあり、犬の需要が急増しました。その後、ロックダウンが解除されると、飼育放棄も目立つようになりました。
かねてから、フランスでは夏のバカンス前にペットが捨てられることが多く、社会問題となっていました。フランスの動物保護団体の関係者は、その理由をバカンス先にペットを連れていくことが難しいためだと指摘しています。
そもそも、衝動的なペットの購入が飼育放棄の原因と考えられ、フランスの議会上院は2021年11月、動物の扱いに関する法律の改正案を可決しました。この改正により、ペットショップでの犬や猫の販売は、2024年1月から禁止となっています。
犬や猫を迎えるには、保護団体や個人からの譲渡、ブリーダーからの直接購入が必要です。うさぎや魚などは引き続き販売できますが、衝動買いを防ぐため、ショーウィンドウへの陳列は禁止されています。
日本でも飼育放棄が起こっている

日本でもコロナ前と比べて、欧米ほど顕著ではないものの、犬や猫を新たに迎える人が増えたとされています。在宅時間が増えたことや、人との距離を取らざるを得ない状況のなかで、癒やしを求める人が多かったことが背景にあると考えられます。
ペット保険大手3社の保有契約件数は、2020年9月末時点で約159万件と、同年3月末から半年で約11万5千件増えました。巣ごもり需要を背景に、ペットを飼い始める家庭が増えたことがうかがえます。
一方で、生活環境の変化や経済的な事情などから飼育を続けることが難しくなり、保護団体へ相談するケースも見られました。都内のある動物愛護団体では、保護する子犬が約6倍に増えたとも報じられています。
飼育放棄の割合はデータとして出ていませんが、動物保護団体からは「コロナが収まってくるにつれて保護数も増加した」という声も少なくありませんでした。
最後に

今回は、日本と諸外国におけるコロナ禍のペット需要の増加や物価高騰の問題、各国で制定された法律などについて振り返りました。残念ながら、ここで取り上げた国以外にも、世界情勢に翻弄されるペットたちが数多くいることは間違いありません。
こうした問題について、私たち一人ひとりにできることもあるかもしれません。例えば、ペットを衝動買いしようとしている人がいたら、よく考えるよう伝えることや、SNSで動物福祉について発信することも大切です。
できることは小さいかもしれませんが、同じようにペットたちを心配している人も世界中にたくさんいます。多くの人が少しずつでも行動すれば、こうした不幸なペットを減らしていけるかもしれません。
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