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お祭りでの「亀すくい」とは?あまり知られていない実態と問題点

シェリー編集部
シェリー編集部

みなさんはお祭りで「亀すくい」を見かけたことはありますか?現在では見かける機会が減りましたが、私も幼少期に亀すくいをしたいと親に頼んだことがあります。

このように、子どもなどががつい気軽にやりたがってしまう亀すくいですが、一方で無責任な放流も増えており、カメに関するさまざまな環境問題を抱えることにもつながっています。

お祭りですくえるカメの問題

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お祭りでの亀すくいなどで問題となっているのが、ミシシッピアカミミガメ(以下、アカミミガメ)の放流とその野生化です。

アカミミガメは、幼体の頃は「ミドリガメ」とも呼ばれ、5cm程度の可愛らしい姿をしています。そんなアカミミガメは人目を引きやすく、お祭りのテンションも相まって、気軽な気持ちで亀すくいをしてしまう人も多いようです。

しかし、お祭りが終わると冷静になり、家では飼えないという無責任な理由から、近くの川に放流してしまうことも少なくありません

在来種を脅かすアカミミガメの問題

アカミミガメがなぜ問題視されているのかというと、アカミミガメは繁殖力が強く、日本の在来種と餌や生息場所を奪い合ってしまうからです。

その結果、在来種が生息しにくくなり、日本にいる在来種が減少していることが問題となっています。日本の在来種の中には、絶滅危惧種に指定されているカメもいます。

お祭りのカメは条件付特定外来生物だった!

亀すくいなどで問題になっていたアカミミガメは、かつて環境省の「要注意外来生物」に指定されていましたが、2023年6月からは新たに創設された「条件付特定外来生物」として、外来生物法の規制対象になりました。

条件付特定外来生物とは

条件付特定外来生物とは、外来生物法に基づき特定外来生物に指定された生物のうち、一部の規制が当分の間適用除外となっている生物の通称です。現在、アメリカザリガニとアカミミガメがこれに該当します。

一般の方でもペットとして飼育することは可能ですが、生きた個体を野外に放すことは法律で禁止されており、適切な管理を怠って逃げ出した場合も違法となる可能性があります。

「アカミミガメ対策推進プロジェクト」とは

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無責任な放流で増加したミシシッピアカミミガメへの対策として、環境省は2015年に「アカミミガメ対策推進プロジェクト」を立ち上げました。

アカミミガメ対策の目指す方向

このプロジェクトでは、以下のような5つの方向性を掲げ、実効性のある取り組みが進められています。

  1. 国外からの導入ストップ
  2. 「捨てガメ=ゼロ」と「終生飼養」
  3. 防除の推進
  4. 生態系の再生
  5. 理解の向上

実現に向けた4つのプロジェクト

これらの実現に向けて、次の4つのプロジェクトが展開されています。

  1. 調査・計画プロジェクト(影響緩和の技術確立と計画策定)
  2. 3原則プロジェクト(終生飼養の推進)※3原則=入れない、捨てない、拡げない
  3. 規制検討プロジェクト(段階的な規制)
  4. 防除プロジェクト(野外からの排除)

プロジェクトの詳細はこちらをご覧ください。

「アカミミガメ対策推進プロジェクト」の公表について(環境省)
https://www.env.go.jp/press/101292.html

野外に放すのは違法?

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カメを長く飼っていた方でも「想像以上に大きくなった」、「何十年もいて飼いきれなくなった」など、さまざまな理由で放流する方がいます。

しかし、アカミミガメは条件付特定外来生物として特定外来生物に指定されており、野外に放すことは法律で禁止されています。

違反した場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります(外来生物法)。

露店の亀すくいが法律違反となる場合も

亀すくいを行う露店側が法令に違反しているケースもあります。

営利目的で動物を取り扱う場合、動物愛護管理法により第一種動物取扱業の登録が必要とされており、お店にはその登録番号などを記載した標識や登録証の掲示などが義務付けられています。カメやヒヨコ、ハムスターなどの露店販売もこの対象に含まれます。

そのため、お祭りだからといって法的な義務が免除されるわけではなく、適切な登録と標識や登録証の掲示が必要です。しかしながら、亀すくいの現場では、こうした法令遵守が確認できないケースもしばしば見受けられます。

もしも飼えなくなってしまったら

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カメを飼えなくなってしまった場合でも、野外に放すことは法律で禁止されており、絶対にしてはいけません。責任を持って、引き取り先を探す努力をしましょう。

まずは友人や知人に相談したり、インターネットで調べたりすれば、引き取りを受け付けている団体や施設が見つかることがあります。最近では、SNSを活用して引き取り手を探す方法も有効です。

もちろん、最後まで飼育することが最も大切です。安易に飼い始めるのではなく、事前にカメの生態や必要な飼育環境についてよく調べ、生涯にわたってお世話ができるかをしっかりと考えることが非常に重要です。

私たちにできること

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今回は、放流によるアカミミガメの増加とその影響についてお話ししました。お祭りで何気なく見ていた亀すくいですが、動物取扱業の登録がされていない露店が存在する可能性があり、法的な問題を抱えているケースもあります。

こうした現状を知ったうえで、それでも亀すくいをしたい場合は、飼育の責任を理解し、最後までお世話する覚悟をもって行うべきです。

終生飼育されずに捨てられてしまった多くのアカミミガメが、日本の在来種にも影響を及ぼしています。これは環境問題にもなっており、環境省がアカミミガメ対策推進プロジェクトを立ち上げるほどです。

この問題を知ることで、安易にカメを飼い始めたり、無責任に野外に放す行為が、少しでも減ることを願っています。

関連リンク

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