犬?オオカミ?「ウルフドッグ」を飼う前に知っておくべき注意点とは
皆さんは「ウルフドッグ」をご存じでしょうか。ウルフドッグという言葉は、本来はオオカミと犬の交雑種を指しますが、「ウルフドッグ」という名称が付いた犬種を指す場合にも使われます。いずれも野性的な外見から、一部の愛好家に高い人気があります。
この記事では、ウルフドッグ全体の特徴と、正式な犬種として認められている2種類のウルフドッグについて、さらに一般家庭で飼育できるのかどうかも解説していきます。
ウルフドッグとは

ウルフドッグという呼び名は、一般にオオカミと犬の交雑種を指すことが多く、犬とオオカミを交配して生まれた系統をまとめた総称として使われます。
交配に用いられる犬種としては、ジャーマン・シェパード・ドッグ、シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュートなどが知られています。
愛好家の間では、オオカミと犬の交雑種を「ローコンテンツ」「ミッドコンテンツ」「ハイコンテンツ」と呼び分けることがあります。一般的には、オオカミの血がどの程度入っているかを目安に分類されます。
その中でも、外見や性質がよりオオカミに近いとされるハイコンテンツは、愛好家の間で特に人気があります。
「ウルフドッグ」という言葉には、交雑種としての個体だけでなく、FCI(国際畜犬連盟)やJKC(ジャパン・ケネル・クラブ)によって正式な犬種として公認されている2つの犬種も含まれます。
それが、次章から紹介する「サールロース・ウルフドッグ」と「チェコスロバキアン・ウルフドッグ」です。
サールロース・ウルフドッグとは

正式な犬種として認められているオオカミと犬の交雑種は、「サールロース・ウルフドッグ」と、後述する「チェコスロバキアン・ウルフドッグ」の2犬種のみです。
「サーロス・ウルフドッグ」や「サルース・ウルフドッグ」などとも表記されることがありますが、本記事ではJKCの標準に合わせて、「サールロース・ウルフドッグ」と表記します。
サールロース・ウルフドッグの歴史
ジャーマン・シェパード・ドッグの愛好家であり、野生動物を深く愛するLeendert Saarloos氏が作出した犬種が、オランダ原産のサールロース・ウルフドッグです。Saarloos氏は、ジャーマン・シェパード・ドッグが人間性を帯びた犬になりすぎているとの懸念から、より優れたワーキング・ドッグを生み出すためにオオカミの血を入れることを思い立ちました。
しかし、実際に生まれてきたのはオオカミの野生特有の臆病さや、逃走したがる気質を持った犬であり、ワーキング・ドッグ向きではなく、犬種としてもなかなか認められませんでした。その後、他のブリーダーの尽力もあり、犬の本質に近い特性を持つ犬種として、1981年にFCIから正式に公認を受けるに至りました。
サールロース・ウルフドッグの身体的特徴
体高はオスが65cm~75cm、メスが60cm~70cmの大型犬です。一般的なドーベルマンと同程度の大きさです。毛色はウルフ・グレーとブラウンが認められています。夏毛と冬毛の違いが顕著で、特に冬になるとアンダーコートが豊かになります。
サールロース・ウルフドッグの性格
家族に対しては非常に忠実で愛情深い一方で、群れへの依存傾向が強く、家に一頭だけで留守番させることが難しいとされています。
非常に臆病なため社会化訓練は欠かせず、一般的な犬が生後8週目から社会化トレーニングを始めるのに対し、サールロース・ウルフドッグは生後3週目からしっかりトレーニングしないと間に合わないとも言われています。
運動量はかなり多く必要で、運動不足になると余ったエネルギーを消費するため、家庭内で破壊行動を見せることもあります。
https://cheriee.jp/articles/20122/
チェコスロバキアン・ウルフドッグとは

先述したサールロース・ウルフドッグと見分けるのが難しいほど外見が似ているのが、チェコスロバキアン・ウルフドッグで、旧チェコスロバキア原産の犬種です。
チェコスロバキアン・ウルフドッグの歴史
1955年、旧チェコスロバキアにおいて、オオカミと犬を交配させ生まれた個体がどのような行動を示すかを実験的に調査する試みが行われました。この実験では、ジャーマン・シェパード・ドッグとカルパチアン・ウルフが交配されたとされています。そして、その子孫たちは人間による飼育が可能であることが実証されました。
その後、オオカミと犬を交配して両者の良い特性を兼ね備えたワーキング・ドッグを作り出したいという思いから、この犬種の繁殖が計画的に進められ、1999年にFCIにおいて犬種として正式に公認されました。
チェコスロバキアン・ウルフドッグの身体的特徴
体高はオスが最低65cm、メスが最低60cmとされ、サールロース・ウルフドッグとほぼ同じくらいの大型犬です。体重はオスが最低26kg、メスが最低20kgとされ、その体の大きさに対してスリムな印象を受けます。毛色は黄色みがかったグレーからシルバー・グレーです。
チェコスロバキアン・ウルフドッグの性格
他のウルフドッグほど神経質ではなく、家族には愛情深く、明るい気質を持っているとされています。ウルフドッグにしては勇敢さも持ち合わせています。
ただし、あまり吠えず、一頭だけでの留守番には適していなかったり、人見知りが激しいため子犬期のしっかりとした社会化訓練は必須であるなど、ウルフドッグらしい一面も備えています。
また、サールロース・ウルフドッグと同じく、運動量がかなり多い点も特徴です。
https://cheriee.jp/articles/24990/
ウルフドッグは飼いにくい?

オオカミのように凛々しくカッコイイため、一部では非常に人気のあるウルフドッグですが、相当な覚悟がない限り、飼うことはおすすめできません。
まず、非常に運動量が豊富で広い飼育スペースが必要であり、優れた跳躍力を持つため、2~3mほどの柵であれば飛び越えて脱走してしまうと言われています。
また、群れで生活する習性が通常の犬より強く残っているため、多頭飼育が好ましいとされています。
さらに、ウルフドッグの食事は一般的なドッグフードですが、体が大きい個体も多いため、エサ代は高額になりがちです。
加えて、ウルフドッグに適したしっかりとしたトレーニングも必要です。なぜなら、ウルフドッグはプロであっても飼育が難しい面があり、実際に次のような事件が起こっています。
ウルフドッグの脱走事件(2021年)
長野県でブリーダー業を営む飼い主宅の犬舎から2頭のウルフドッグが脱走しました。警戒心の強さもあってか、なかなか捕獲できず、警察や自治体職員も出動する大騒動となりました。
翌日、飼い主がまるでタックルするかのように抱え込んでようやく捕獲に成功したとのことです。
ウルフドッグによる死亡事故(2015年)
4頭のウルフドッグを飼う北海道の施設内で、女性が胸や腕をかまれて亡くなっているのが発見されました。亡くなった女性はウルフドッグの世界ではトップクラスのブリーダーであり、4頭中3頭は彼女が育て、飼い主に譲渡した犬でした。
女性は飼い主が不在時に訪問したため、犬たちは家族でない侵入者が来たと判断し、攻撃を加えたと考えられています。
https://cheriee.jp/articles/17337/
精悍でかっこいいウルフドッグ!

ウルフドッグは交配により、オオカミにかなり近い個体も存在する交雑種です。中には犬種として認定されている種類もいますが、基本的に飼うのが難しいとされています。
しかしながら、オオカミのように精悍で野性的な魅力があるのも事実です。飼うのは難しくとも、図鑑や動画などを通じて親しんでみてはいかがでしょうか。
関連リンク
- 1位は身近なあの犬!オオカミに近い遺伝子を持つ14犬種ランキング
- https://cheriee.jp/articles/35359/
- 太古から犬と人間は友達だった!世界最古の犬の壁画が物語るものとは
- https://cheriee.jp/articles/23280/
- オオカミには真似できない!進化の過程で得た犬の「愛され目力」とは
- https://cheriee.jp/articles/16187/
- 犬のルーツをたどる!野生のオオカミからイエイヌ化した歴史
- https://cheriee.jp/articles/10003/
- 【犬図鑑】初心者には難しい?シベリアン・ハスキーの特徴と飼い方
- https://cheriee.jp/articles/27041/