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ねこ健康

【獣医師監修】猫が痒がるのはなぜ?原因を突き止めよう!

相澤 啓介
相澤 啓介 獣医師

普通に生活をしていても、皮膚の痒みを感じることはあると思います。通常それらは一過性で、しつこく痒みがぶり返すことは稀です。しかし、愛猫がしきりと痒がっていて、皮膚を見たら掻き壊しているとしたらどうでしょう。

猫の痒みの原因には様々なものがあります。痒みは大きなストレスとなりますし、放置することでどんどん痒みが進行していくこともあります。
ストレスで別の病気になってしまうかもしれません。では、痒みの原因として何が考えられるのでしょうか。

今回は、猫の痒みで考えられる疾患について解説します。

皮膚の疾患

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最初に考えなくてはならないのは皮膚の感染症です。治療を行う際に、痒み止めとしてステロイドを使うこともありますが、感染症にステロイドを使用するとかえって悪化させてしまいます。

まずは、感染がないかを検査によってしっかりと確認していきます。また犬とは異なり、猫のアトピー性皮膚炎は少ないと言われています。

皮膚糸状菌症

【症状】
フケ、脱毛(毛がちぎれることによる)、細菌感染を伴うと痒み、赤みなど。
【原因】
真菌である皮膚糸状菌の感染。感染には皮膚の免疫低下も関連しているため、免疫異常を起こす他の疾患がないかも確認する必要がある。
【備考】
皮膚糸状菌は環境中で1〜7年も感染性を有するという報告もある。また、ヒトにも感染する人獣共通感染症である。

ノミアレルギー性皮膚炎

【症状】
強い痒み、腰背部の丘疹(きゅうしん;皮膚の表面が小さく盛り上がった状態)、引っ搔くことによる自己損傷性の脱毛など。症状の強さはノミの寄生数と相関がなく、少数の寄生でも強いアレルギー反応を示すことがある。
【原因】
ノミに対するアレルギー反応。ノミが寄生していてもアレルギーが起こらなければ比較的軽度の掻痒が起こる程度で済むこともある。
【備考】
定期的な駆虫薬の投与(内服、外用)によって予防が可能。痒みを伴う皮疹は尾根部、尾部、大腿部、鼠径部に認められることが多い。

疥癬

【症状】
初期症状は耳端のカサブタ、皮膚の肥厚。進行すると激しい痒み、フケ、脱毛など。掻きむしることによって傷がつき、そこから細菌感染を起こすこともある。
【原因】
ヒゼンダニの寄生による。ヒゼンダニを保有する猫との接触によって簡単に伝播する。
【備考】
ヒゼンダニはヒトにも感染する。60℃のお湯に10分浸漬することでヒゼンダニは死滅する。

外耳炎

【症状】
耳や耳付近の痒み、赤み、頭部をこすりつけるなど。耳周囲の傷や脱毛で気付くことも多い。
【原因】
アレルギー、腫瘍、ミミヒゼンダニなどの寄生虫など。細菌や真菌は二次的に増殖し、耳垢の増加や耳道のびらん/潰瘍を引き起こすこともある。
【備考】
外耳炎の進行によって外耳道上皮の肥厚や角質の増加が起こり、外耳道が狭くなる。すると外耳道の通気性は悪くなり、微生物の増殖が起こりやすい環境が生まれ、外耳炎の治癒が困難となる。重症例では垂直耳道摘出や全耳道切除などの外科手術が必要となることもあるので、侮ってはいけない。

舐性皮膚炎

【症状】
皮膚の赤み、痒み。
【原因】
ザラザラした舌で繰り返し身体を舐めることによる。ストレスが関与していると考えられる。
【備考】
舐めやすい箇所(腹部や肢端)に発生しやすい。ストレスが関与していると言われている。他の疾患に特発性膀胱炎が挙げられ、これは血尿、頻尿、排尿時疼痛、トイレ以外での排尿などの症状を呈する。ストレスとなる可能性のあるものを撤去することが望ましい。


その他

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例えば、普段のフードを変えたタイミングや引越しをしたタイミングで痒みが起こっているケースもあります。

アレルギーや精神的なものが原因となっているわけですが、言葉を話せない分、人間が汲み取ってあげる必要があります。

食物アレルギー

【症状】
長引く痒み、脱毛、下痢など。
【原因】
食餌中に含まれるタンパク質へのアレルギー反応。猫における食物アレルギーの病態は解明されていない。
【備考】
牛肉や卵などいくつかのタンパク質へのアレルギーは、血液検査によってある程度調べることが可能。ただし、基本的に原因となる食品成分の特定は困難なことが多く、解決には時間を要する。また、他の皮膚疾患と類似した症状であり、まずはこれらの除外診断を行う必要がある。

痛みでも痒み様行動をとることがある

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関節炎など慢性的に鈍い痛みが現れるような疾患では、その部位をしきりに舐める行動が見られることがあります。ヒトで言う「痛い部位を手で擦る」行為に相当しますが、これを見て皮膚に異常の原因があると思い込んでしまうわけです。

実際に舐めている部分は皮膚が赤くなっていることも少なくありません。皮膚以外に、歩様の異常や排泄の状態なども総合的に観察することが重要です。

まとめ

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痒みは直接命に関わるような臨床徴候ではありませんが、非常に不快です。リラックスできないですし、もしかしたら睡眠にも影響しているかもしれません。

痒みの治療には時間がかかるものもあります。しかし、愛猫のQOL(生活の質)を向上させるためにも、積極的に痒みの除去には努めた方がいいでしょう。

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